【選任担当者が公開!】監査役になるには!?|必要な資格やキャリアを完全解説!
- 監査役になって時間に縛られない働き方をしたい
- 自身のキャリアを活かしてより裁量権の大きな仕事がしたい
- 転職エージェントに相談しても、抽象的な内容しか教えてもらえない
監査役になりたいと思っても、「どうやってなればいいか分からない」「周りに詳しい人がいないため情報収集できない」という方は多いです。
私は監査役の専任担当者として、「誰を監査役にするか(=監査役候補者)」を経営陣に提案してきました。
この記事を読めば、「監査役に必要なキャリアや具体的に監査役になる方法」が分かります。
結論を言えば、現在監査役の経験がない人は以下のキャリアを目指すことが一番現実的です。
- 経営企画室
- 内部監査部門
- 大手監査法人
実際に監査役(候補者)を選任してきた経験をもとに記載したので、監査役を目指す人はぜひ最後まで読んでください。
監査役とは
監査役を目指すには、まず監査役とはどういうものなのかを知る必要があります。
監査役とは役員である
監査役とは、会社法上で定義される役職の一つであり、部長や課長とは大きく異なります。それは、監査役は株主に雇われた(委任された)役員であるという点です。
監査役(役員) | 部長/課長 | |
---|---|---|
定義 | 法律(会社法)で定義 | 各会社ごと(社内規定)に定義 |
契約 | 株主との委任契約 | 会社との雇用契約 |
なお、役員とは、取締役と監査役から構成されます。
※厳密にはさらに詳細な区分がありますが、上記の認識で99%困らないです。
業務内容は会社経営に不正がないか確認すること
株主から業務を委任されている監査役ですが、その役割は「会社経営で業務や会計上の不正がないかを確認し、是正すること」です。
株主は、次のとおり、「経営する人(取締役)」と「経営する人を監視する人(監査役)」の2つの役割を持つ役員を雇うことで、経営の質を担保しています。
- 取締役:会社を経営する
- 監査役:取締役がキチンと経営しているか監視する
補足:株式会社の「所有と経営の分離」
株式会社は、株主にお金を出してもらい運営していますが、株主全員が経営能力を有しているわけではありません。そこで、株主は会社を株式という形で「所有」し、「経営」は能力のある取締役にお願いしています。
これを、「所有と経営の分離」といいます。
監査役のメリット
監査役は株主に雇われているため、会社に雇われている従業員にはないメリットがあります。以下に代表的なものを挙げます。
報酬面で優遇されている
取締役を監視するという重要な役割を担うことから、一般的に、従業員と比較して高額な報酬を受け取ることが多いです。ボーナスという概念はありませんが、ストックオプション等、月額の役員報酬とは別に報酬を受け取ることもあります。
就業時刻にとらわれず自由に働くことができる
従業員と異なり、勤務時間に制約がないため、自由な時間に働くことができます。ただし、好き勝手に働けるわけではなく、次の点には注意が必要です。
- 職務を遂行できる程度の労働は必要
- 残業や休日の概念がない
監査役は、労働基準法の対象外であり、従業員の働き方を定める就業規則からも対象外になっていることが多いです。
複数社の監査役を務めることができる
近年副業を認める会社が増えてきましたが、複数の会社に勤めるのは難しいのが現状です。しかし、監査役を含む役員は、複数の会社の役員を務めているケースが多いです。
監査役に求められる能力とは
監査役には、次の2つの能力が求められます。特に、財務・会計の能力があるかどうかは重視されています。
- 適切な経験と能力
- 財務・会計・法務に関する知識
監査役に必要な能力は、コーポレートガバナンス・コードで定められています。
各社事情はあれど、基本的には次の条件を満たす監査役を探すことになります。
【原則4-11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
引用:金融庁・東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」
(中略)また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
適切な経験と能力について
会社・業界の知識や、会社のリスク等を見つけて正すための知識・経験のことを指します。具体的な資格の有無だけではなく、業務経験等も参考に判断されます。
- 営業部門の責任者として自社に長年勤務している
- IT業界の監査役としての勤務経験がある
- 内部監査人としての勤務経験がある 等
財務・会計・法務に関する知見について
基本的には資格の有無で判断されます。財務・会計や法務の知見を示す代表的な資格は次のとおりです。
これ以外にも、大手監査法人での勤務経験がある、経理部門で長期間の勤務経験がある人等が監査役に就任する場合もあります。
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- USCPA(米国公認会計士)
- CIA(公認内部監査人)
USCPAについて詳しく知りたい人は以下の記事を参照してください。
監査役になる方法5選
監査法人になるキャリアは様々なルートがありますが、代表的なものを5つ紹介します。
- 社内で出世する
- 弁護士事務所や会計事務所に所属してオファーを待つ
- 経営者・監査法人・融資銀行経由で紹介してもらう
- 日本監査役協会等の役員人材バンクからオファーを受ける
- 投資会社(VCやPEファンド)に勤務して出資先に出向する
社内で出世する
もっとも多いのが、自社で出世して監査役になるケースです。営業職等の一般的な職種から監査役になる人もいますが、多くは内部監査部門や経営企画部を経由します。また、M&A等で子会社を抱えたタイミングで、親会社から監査役を置くケースもあります。
弁護士事務所や会計事務所に所属してオファーを待つ
弁護士事務所や会計事務所等、いわゆる士業として働いていると、会社から監査役になってほしいとオファーをもらえることがあります。ただし、すでに他の会社で監査役としての経験を積んでいる人に依頼するケースがほとんどです。
経営者・監査法人・融資銀行経由で紹介してもらう
経営者は、経営者仲間やVC(ベンチャーキャピタル)、融資を受けている銀行等から適した人材を紹介してもらうことがあります。これらの組織とコネクションがあれば、就任先を紹介してもらえることがあります。
日本監査役協会等の役員人材バンクからオファーを受ける
優秀な監査役を探している企業は多いため、監査役等の役員専用の人材バンクが存在します。自身の職務履歴書を登録しておくと、企業から監査役を務めてほしいとオファーを受けることができます。
投資会社(VCやPEファンド)に勤務して出資先に出向する
最後は、VC(ベンチャーキャピタル)やPE(Private Equity)ファンドに勤務している人が、投資先の役員を務めるケースです。監査役ではなく取締役になることが多いです。また、いずれもかなり専門性の高い業界であり、一般の事業会社から転職することは非常に難しいです。
監査役になるには、監査役としての経験がないと難しい。
未経験から監査役に就任した事例
監査役を探すときは、監査役の経験がある人を選ぶケースがほとんどです。しかし、監査役の経験がない人を監査役に選任する事例もあります。
この章では、未経験の人が監査役に就任した例を紹介します。
- 経理職から経営企画室を経て監査役になる
- 営業職から内部監査部門を経て監査役になる
- 事業会社から大手監査法人に転職した後、監査役になる
これらのキャリアでは、自社で監査役に就任するだけでなく、他社に監査役として転職することもあります。
経理職から経営企画室を経て監査役になる
経理職を経験した後、経営企画室に移籍して監査役に就任した事例です。経理職は、財務・会計の管理を通して会社全体のことを把握できるため、経営企画室として働くこともあり得ます。その後、経営企画室で培った知識・能力を活かして監査役になります。
営業職から内部監査部門を経て監査役になる
営業職に限りませんが、一般的な部門から内部監査部門に異動した後、監査役になった事例です。内部監査部門は業務内容が監査役と共通している部分があり、また監査役と接する機会も多いため、そのまま監査役に就任することがあります。
内部監査部門は、会社全体が、会社のルールに従って業務をしているか、業務効率が悪いところはないかを確認する部門です。
事業会社から大手監査法人に転職した後、監査役になる
最後は、事業会社から大手監査法人に転職して、経験を積んだ後監査役にな事例です。監査法人では、企業の計算書類を監査したり、様々な角度から助言したりする業務を担っています。
なお、これらの事例にかかわらず、未経験から監査役になる人は、以下のいずれかのキャリアを経験している場合が多いです。
- 経営企画室
- 内部監査部門
- 大手監査法人
USCPAに合格して監査役を目指す
監査役は、報酬面で好待遇であり、時間に縛られない働き方をすることができます。他方、一般的な職種の人が監査役になるには、目的を意識したキャリアを積む必要があります。代表的なものが、経営企画室、内部監査部門、大手監査法人等です。
そして、これらのキャリアを目指すのであれば、USCPAの合格を目指すことが現実的な方法の1つです。理由は以下のとおりです。
- 経営企画室・内部監査部門・大手監査法人のすべてに繋がる資格である
- 公認会計士や弁護士資格と比較し、取得が容易である
- グローバルなキャリアを築くことができる(海外拠点のある会社も狙える)
キャリア形成だけでなく、監査役として必要な知見の詰まった試験なので、将来監査役を目指す方はぜひ一度ご一考ください。